LIVING ART IN TOYAMA 2019 を振り返って

LIVING ART IN TOYAMA 実行委員の吉川です。

 福沢地区コミュニティセンターがリビングアートに満たされた2日間が終わって早2週間。段々と秋の足音が聞こえてきている今日この頃ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。「LIVING ART in OHYAMA」から「LIVING ART IN TOYAMA」と名前を新たにし、「新しい暮らしのスタイル」というタイトルで新たなスタートを切った2019年でしたが、今までにも増して一人一人が創造的に暮らしてゆくヒントが満載の2日間になったのではないでしょうか。

 私は建築デザインの仕事をする一方で、本イベントの総合プロデューサーである貫場幸英氏のアシスタントとして活動しています。LIVING ART初参加は2006年ですので、イベントには10年以上関わらせていただいています。そんな視点で今年のイベントをふりかえりつつ、2019年のフィナーレとさせていただければと思います。

 そもそも、「リビングアート」とは何なのでしょうか。貫場氏は、「一人一人が創造的に生きる為に、身近な素材を使って暮らしを豊かにする、誰にでもできるライフスタイルのことだ」と言います。例えば、今年の会場の所々に設えられていたセメントの一輪挿しは、散歩中に道端のコンクリートの隙間から力強く生えていた野花を見て思いついたもの。特別展示の「記憶の彩」は、着なくなった服を捨ててしまうのではなくて、何かその思い出を残しながら生活を彩れないかと考えて思いついたもの。また今年は非公開でしたが、アートスペースVEGAの象徴である「土の間の水盤」は、水たまりに映り込んだ青い空と白い雲を見て思いついたものだそうです。何気なく身の回りに当たり前のようにあるもの。ふと美しいなと感じたものや、大切な記憶や思い出。それらをいつもと少しだけ角度を変えて見ることで、暮らしを豊かにするカタチを作り出す。そんな実例が会場中に散りばめられていました。

 ワークショップでは、古い布を使って空間を彩るリボンを作ったり、身近な素材である竹で楽器を作って、会場中に楽しいリズムを鳴り響かせました。富山大学のファクトリーでは、木っ端や木の削りカスを使って作る「コロコロくるま」や定番の「万華鏡」、そして「世界でひとつだけの花」。どれも気にしなければ捨てられてしまうようなものに新しい命が吹き込まれていました。アートマーケット9店舗では、プロからアマチュアまで、自身のライフスタイルの中でリビングアートを実践されている方々が出店してくださっていました。そして会場に用意された大きなキャンバスには、来場者の皆さんが思い思いに描くことで、会場そのものを大きなアート空間に変えてくださいました。

 あらかじめ用意されたアート作品を見るだけではなく、来場者自らが素材に触れ手を動かして作ってゆくライブ感が、今まで以上に色濃く会場を満たしており、「あぁ、これが貫場氏の言っているリビングアートってことなのか…」と感じました。トップアーティストの作品があるわけではないけど、参加者一人一人がアーティストになって、会場全体がアート空間になってゆく。そして会場で作ったものや経験をそれぞれの家に持って帰って今度は自分の空間を彩れば、一人一人の毎日の暮らしがリビングアートになってゆく。それが、「新しい暮らしのスタイル」の提案だったのかなと。

 リビングアートなライフスタイルが少しずつ広がり、「あなたのリビングアートは何ですか?」なんて尋ねることが自然になる。そんな誰もがリビングアートを持っている街になったら素敵ですね。2006年に初めてこのイベントに関わらせていただいた時、将来に悩む大学生だった私がこのイベントで最も惹かれたことの一つは、未来へ向けた時間をデザインしているところでした。単発のイベントではなく、ここで色々なことを経験した子供達が成長し、また次の世代の子供達にリビングアートの精神を伝えてゆく。それが貫場氏の考えているまちづくりの本質でした。そして今年は、長年リビングアートに参加し続けてくれていた子供が中学生になり、運営スタッフとして参加してくれていました。ゆったりとした時間の中で、少しずつリビングアートの芽が育ってきているなということを実感できました。

 最後に、私が10年以上もこのイベントに関わり続けているのは、貫場氏の魅力に惹かれたのだろうと思います。 スポーツとアートとデザインを自由に飛び越えて、時には職人のような視点で物作りに励み、時には少年のような無垢な笑顔でアルペンスキーに取り組むスタンス。このギャップこそが子供 から大人までを笑顔にできる企画を考えられる秘訣ではないか、と考えています。

 私にとってのリビングアートは何だろう?本業である建築デザインの仕事をしながら、頭の片隅でいつも考えています。人の暮らしを豊かにするライフスタイル、そんなリビングアートの心が込められた建築ができたらきっと素敵ですよね。そして、どんな人の仕事や活動にも込めることのできる思いだと思います。「あなたのリビングアートはなんですか?」今度は福沢で皆さんとそんなお話ができたら楽しいすね!

 「ゆくゆくは、リビングアートなライフスタイルを持った方をもっともっと紹介する為に、コンテストのようなことをやりたいな…」と先日貫場氏が呟いているのを小耳に挟みました。今年のイベントが終わったばかりだというのにもう未来の妄想を始めてるんですか…と思いましたが、なにやら新しい企みがあるみたいです。まだまだ進化し続けるLIVING ART IN TOYAMAからこれからも目が離せませんね!

それではまた、福沢でお会いできる日を楽しみにしています。ありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Scroll to top